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世界の終わり。
2024年05月18日 (Sat)
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2009年05月21日 (Thu)
 震える声で彼女が最後に叫んだのは僕の名前だった。目の前で行われている大惨事が嘘か夢か幻のようで、僕は眼を見開いたまま口をぱくぱくと動かすことしか出来なかった。変わり果てた彼女を前に何も出来ない無力な僕は、ただひたすら青い天井を眺めて時が過ぎるのを待つしかなかった。
 彼女は僕を溺愛していたし、僕も彼女を心の底から愛していた。しかし僕は彼女を抱き締めることも、口づけをすることも、優しく頭を撫でて慰めてあげることも出来ない。自分の不甲斐無さを恨んだが、これが現実であり運命である、そう受け入れることにした。僕が出来るのは彼女に元気な姿を見せて彼女の支えになること。寿命に逆らってでも生きてやる。僕はそう誓った。
 彼女はある日男を一人連れて来た。それは彼女の恋人のようだった。男は毎晩のように彼女を抱き、僕が彼女にしてやれなかったことをいとも簡単にしてみせた。彼女が幸せならそれで良いじゃないか。所詮僕はただの魚なのだから。そう自分に言い聞かせ、彼女の幸せを願った。
 男は日が経つにつれ、彼女に暴力を振るうようになった。泣きながら「ごめんなさい」と謝る彼女は、決して何も悪くない。それなのに男は何度も何度も泣き叫ぶ彼女を殴り、蹴り、時には物を投げ、無理矢理犯した。そのうち男は彼女を監視し始めた。痣だらけの彼女は、怯えた目で男の言うことに従った。僕は当然の如く、男に対し殺意を抱いた。でも、何も出来なかった。悲しくて悲しくて、死んでしまいたかった。
 男はある日、彼女に命令した。
「あの魚どうにかしろよ」
 彼女は小さな声で
「出来ません」
 と言った。張り手が飛ぶ。頭を壁にごんごんと打ち付けられ、汚い言葉を浴びせられた彼女は、もう涙を流してはいなかった。無抵抗になった彼女の首に男は手を掛け、思いっきり締め上げた。体の先が痙攣する。彼女はやがて動かなくなった。
 男はそれから毎日冷たくなった彼女を犯し続けた。何度射精しても足りないようだった。僕は絶望と空腹で死んでしまいたかった。でもなかなか死ねない。神様は残酷だ。それでも、段々と彼女の居る世界が近付いて来ていることは分かっていた。
 ある時、男が僕の水槽に近付いて来た。こちらを覗き込み、殆ど動かなくなった僕を見て笑う。そして水槽に手を突っ込み僕の体を掴んだ。
 僕は最後の力を振り絞って放電した。びりびりびりびり。男は驚いて手を離し、そのまま後ろにばたんと倒れた。僕は男の胸の上で命が尽きるまで放電し続けた。
 男より先に、僕は死んでしまった。でもこれで彼女を抱き締めることが出来る。水槽の青い光だけが、変わらずに僕たちを照らしていた。



(2009/5)
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プロフィール
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原発牛乳
年齢:
39
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女性
誕生日:
1984/09/21
職業:
自由人
趣味:
眠ること
自己紹介:

ただのメモです。


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